塾講師

<塾を開業しようvol.3>失敗例と成功例

女性が塾を開業して起業するにあたって、気を付けなければならないことや、考えておかなければならないことについて書いてきましたが、それでもうまくいくときは行くし、うまくいかないこともあります。なんでも経験してみないとわからないことがあります。初めてのことを最初から全て分かっている人なんていませんよね…。
そこで、「事例に学ぶ」ことが必要になってきます。

成功例と失敗例から学ぼう

これから、女性が塾を開業した際の成功例と失敗例を3例ずつ取り上げます。成功話も失敗話も「やってみなければわからないこと」でできているので、これから起業しようとしている人にとっては一読して常に頭に置いておくことがよいでしょう。


また、こういう事例があったからと言って自分も同じようなケースに当てはまるとは限りません。そっくりそのまま真似たり、避けたりするのではなく、これらの事例に共通する「知恵」を得ていただければ幸いです。

成功例と失敗例から学ぼう

【成功例1】自宅で英会話塾を開業

Aさん(41)は、主婦です。高校生と中学生のお子さんがいます。子どもにあまり手がかからなくなったということもあり、家計を少しでも助けるという意味でも空いた時間を使って自宅で英会話塾を開業できないかと検討しました。


もともとAさんはアメリカに留学した経験もあり英語は得意でした。


そんなとき、ある英会話塾の広告が目に入ったのです。フランチャイズ募集ということだったので応募します。


するとAさんの住んでいる地域では最初の応募だったということもあり、話はとんとん拍子に進み、教材と看板が届いて開業。すると近所の人がうわさを聞きつけて体験レッスンを受けたいと申し出てきました。


Aさんは、フランチャイズの方針を守りつつもご自身のアイデアも取り入れ、子どもたちがあくまでも「英会話って楽しい」と思えるような授業を心がけました。開講して5年後、自宅で15名もの生徒を教えるに至っています。


だいたい月の収入で11万円超くらいです。教材が販売されればそれにプラスした売り上げがあります。


ちなみにAさんは本部が配布する宣材以外の広告活動は特にしておらず、すべて口コミによる集客だそうです。

【成功例1】自宅で英会話塾を開業

【成功例2】途中からフランチャイズに変えて成功した例

Bさん(50)は、子どもたちもすでに独立した主婦です。人口の多い地域に住んでいるため、TOEIC800点、英検2級という実力を生かして、何かビジネスをと考えていたところ近くでフランチャイズの募集があり応募しました。


もともと普段は自宅の1階で教室を独自の工夫でしていましたが、なかなか生徒数が最初の5名から増えていきませんでした。


そこで、効果的な教材とカリキュラムを求めてフランチャイズに加盟することにしたのです。


もともと多少の知名度はあったのですが、フランチャイズに入ると教室名そのものが変わりますので再スタートという形になります。Bさんは本部に宣伝用チラシを数百枚ほどもらって、学校の周辺で子どものいそうな家庭にポスティングをして回りました。


ちょうど小学校の義務教育に英語が取り入れられることが話題になっていて、そのチラシ配布の直後に2名の新規生徒が入校。そのあとは口コミで広がっていきました。そこから、夏休みに英語しか使ってはいけない野外活動も取り入れるなどの独自の工夫をして子どもたちの楽しみになるような教室を心がけました。


今では生徒数は21名、今後もっと増えれば、教室を借りようかと検討中です。

【成功例2】途中からフランチャイズに変えて成功した例

【成功例3】独自の考えで学習塾を開業

Cさん(37)は元教師。事情があり教職を辞して地元に帰って結婚しました。住んでいる地域は人口の少ない地域です。近くの中学校に通う生徒の多くはは、高校受験の時期になると、片道車で30分以上かけて都市部の進学塾に通っています。


学習塾が終わるのは夜遅いですし、親御さんたちの送迎も大変です。そんな現状をみていたCさんは、空いている家屋を活用して学習塾を運営することにしました。


ただ、ほかの大手進学塾と同じようなことをしていてもかなうわけがないと思ったCさんは、特色として徹底した個別指導と「合格がゴールではない」というポリシーの元、これからの社会をささえる人を育てるというコンセプトを立てます。


Cさんのやり方は、ほかの進学塾や学習塾がまねできるものではなく、生徒さん自身が学ぶ必要性を感じて自律的な学習を促すようなやり方であったため、成績や希望の進路にかかわらずいろんな生徒さんが来るようになりました。


一部の成績上位者だけが通う有名進学塾とはえらい違いです。生徒さんたちも口々に「成績が上がった」「勉強が楽しくなった」と言い始めたため口コミで広がるようになりました。


いまでは都市部にも1校教室を持ち、SNSでも積極的に発信、講師も雇用するまでになっています。

【成功例3】独自の考えで学習塾を開業

なぜ成功したのか

3つの成功例を見てみましたが、これらの事例から共通して見えてくることは何でしょうか。それは、以下のようなことではないかと思います。


・独自の工夫が入っている 


たとえ、フランチャイズであったとしても生徒さんや親御さんたちが望んでいることを認識して、それを実現するために工夫することを厭わない姿勢があります。ほかの塾にはまねできないことをやるというのが重要なポイントです。


・タイミング 


開業するタイミングも重要です。これらの例では英語教育の開始という、特定の教科の需要が高まった時期に始めたり、宣伝したりするというところです。


・そもそもの授業を大事にする 


そして最も基本になることで、誰でもわかることですが、「授業が実りあるものとして感じられなければ生徒は離れる」ということです。いろいろ流行に乗ってもまずい食品は絶対に売れません。それと同じで、「学ぶことが楽しい」と感じられる独自の工夫が成功につながっています。

なぜ成功したのか

【失敗例1】高学歴女性の無計画開業

Dさん(29)は東京の難関大学を卒業したいわゆる高学歴の女性です。有名企業に7年務めた後に、「何か」起業したいと会社を辞めました。


進学塾を開設しようと思い、まずは教室の物件探しをしました。相場がいくらくらいかわからなかったし、教室がなければ塾はできないしといった動機です。いろいろ調べて最も集客しやすい立地で好適物件がありましたので契約しました。


駅から徒歩3分以内で16坪、10万円はなかなかのお値打ちです。


ここから彼女は収支を計算し始めます。近隣の進学塾より少し安い値段を設定したら、13人も生徒がいれば赤字にはならないだろうということがわかりました。そこで新聞にチラシを打ちましたが、2人ほどしか反応がありませんでした。新聞のチラシは1日だけでしたが結構な出費です。


しかも、カリキュラムは、ほかの進学塾で行われている内容をほぼ踏襲したため、目新しいところがなかったため、この2人にも断られてしまったのです。結局、1人の入校者も入れられないまま、教室は解約せざるを得ませんでした。


前払いの保証料などとチラシ代だけまるまる損となりました。

【失敗例1】高学歴女性の無計画開業

【失敗例2】生徒の卒業を考慮に入れていなかった例

Eさん(42)が経営する英会話塾は比較的うまくいっているようでした。Eさんは駅近くにマンションを借りて、その一室で始めたのですが、幼稚園児から中学生まで連続で教えるスタイルで、ここまでは最初はうまくいっていました。


生徒は中学校を卒業するタイミングで卒業していきます。たまたまその年は、生徒の半分がいっぺんに卒業する年となり、4月からは生徒数が半分になってしまいます。次の生徒を入校させないと4月分の賃借料すら払えません。


ところがEさん、最初から分かっていたはずなのに、この「確実に訪れる未来」から無意識に目をそらせていたのか、何ら手を打っていませんでした。結局4月になっても3人しか新規の入校はなく、家賃が払えないことから閉校せざるを得なくなりました。


生徒の年齢構成にも気を配るべきだったとEさんは後悔していますが、またいずれ再開する道を模索中です。

【失敗例2】生徒の卒業を考慮に入れていなかった例

【失敗例3】不意の災難で資金繰りに窮した例

Fさん(45)は4人の子どもを持つ主婦。いつもパワフルで主婦業の傍ら、自宅で英会話塾を運営中です。


運営は、フランチャイズで届いた教材に独自の工夫を加えて楽しい教室づくりに心がけ、8人ほどの生徒を忙しく教えていました。


夏も終わりに近づいたころ、台風がきました。風が相当に強くなってきたので「これはあぶないな」と思い雨戸を閉めようと思ったその時、折れた木が飛んできて、ガラスに当たり割れるまではいかなかったものの、大きくひび割れが生じてしまったのです。


その部屋は、レッスンをするリビングだったため、生徒さんの安全のためにも早急なガラスの付け替えは優先事項でした。子どもも4人もいるためいつも家計がカツカツなところに訪れたに不意の災難。仕方なくもらったばかりの当月のレッスン料の中からガラスの修理費を出したのです。


そこで、Fさん、大変なことに気が付きます。これではフランチャイズ料が払えないではないですか。


フランチャイズ料は自動引き落としですが、残高が不足で引き落とされないという事態になりました。そこで家計の中からしかたなく補填。すると今度は家計が苦しくなります。


こうして次の月にも伸ばした支払いが影響し、だんだん家計はもっと苦しくなっていくのでした。


「レッスンをするよりは、どこかの会社に就職して働いた方がいいのではないか」Fさんは真剣にそう考え始めています。

なぜ失敗したのか

3つの失敗例を見てきましたが、いずれも共通して言えることがあります。


「先の見通しが十分ではない」


ということです。


一つ目の例は、教室の賃借料がいくらか、というところから始まっていますが、大事なのはそこではありません。借りた教室に合わせて生徒数を決めるというのは順番が逆で集められなければ計画は破綻します。。


2つ目の例は確実に訪れることでありわかっていることですから、早々と集客に着手しておくべきだったと思います。Eさんも分かっていたのでしょうかなんとなく直視したくなかったのだと思います。ひとはだれでも嫌なことからは目をそらしたくなるからです。


それと思わぬ出費に備えるのは重要なこと。そのためには月々少しずつ保険をかけるということも重要になってきます。

まとめ

成功例と失敗例を見てきました。


人生は長いし、起業したら塾の寿命も長く続けたいというのであれば、先々を予想して備えるということが必須になるでしょう。


そして、たくさんあるほかの塾との競合に勝つには、「ほかの塾にはない独自の工夫」で授業を大事にする経営が功を奏していましたね。


まとめますと、


「最初に方針を、それに基づいて計画を立てる」


「ほかの塾にまけない工夫をする」


「未来を予測して備える」


といったところでしょうか。みなさんも、綿密な計画とほかの塾に負けない工夫でがんばりましょう。


 

written by 鬼尾宗慶

人事、労務、税務などビジネス関係に関する依頼の多いフリーライター。看護師の転職など、働く女性についての執筆も多い。
趣味:航空写真・バイク