塾講師

<塾を開業しようvol.1>資格や届け出は? 開業資金はいくらかかるの?

自分で起業したい人にとって大事なのは、「自分で得意なこと・好きなことで起業する」ということでしょう。
どんなお仕事でもやりがいをもって続けられることが重要です。今回はそんな起業のネタの中から、「塾」を開業することを取り上げてみました。生徒さんと直接ふれあいながら成長を見守れるとてもやりがいのある仕事です。
まずは、開業するにあたってのスタート条件、「必要な届出」や「開業に必要な資金」という点にスポットを当てて調べてみましょう。

自分の得意分野で「塾」を開業する方法

自分で得意なことを生かしてそれを人に教える「塾」を開業したい。そう思った時に気になることがいくつかありますね。


・塾の開業に必要な資格はあるのか?


・塾開業に関係ある免許と資格とは?


・いろんな届出の必要はあるのか?


・開業資金は・・・   などなど


それでは、ここから8つの項目に分けて調べていきましょう。

自分の得意分野で「塾」を開業する方法

塾の開業に必要な資格はあるのか?

「塾」の開業になんらかの資格が必要なのでしょうか。


結論から言いますと、塾の開業に資格は必要ありません。学歴も関係ありません。熱意と教えるテクニックさえあればうまく運営していくことも十分可能でしょう。


教職員免許、英会話塾なら英検2級~1級・TOEIC高得点などの資格があるに越したことはありません。資格や免許は過去の実績がなくてもその人の能力を証明してくれるものです。あったほうが、生徒さんの集客には役立つでしょう。


また、フランチャイズで開業する場合など、検定や資格取得が条件になる場合もありますので、なんらかの検定資格は持っていたほうが良いでしょう。

塾の開業に必要な資格はあるのか?

塾開業に関係ある免許と資格とは

では、塾の開業に有利になるような資格や免許とはどのようなものがあるでしょう。


その種類について簡単にまとめてみました。学習塾なら次のような資格が有利でしょう。


・教育職員免許状


・公益社団法人全国学習塾協会認定 学習塾講師検定制度


英会話なら次のような資格です。


・英検(実用英語技能検定)


・TOEIC(Test of English for International Communication)


この他にも、書道塾やそろばん塾などを開業したい方向けの民間の資格もあります。


こうした民間の資格には有効期限があり、定期的に費用が必要な場合もありますので注意が必要です。

塾開業に関係ある免許と資格とは

いろんな届出の必要はあるのか?

個人で塾を開業するとなると、開業届を出さなければなりません。


これは、所得税法第229条規定されている法律上の義務になります。開業届の用紙は税務署に行けばもらえますので、開業後1カ月以内にそれに記入して提出することとなります。


開業届の提出は「私は塾運営で得た事業所得の所得税を納めます」という宣言と同じ意味です。確定申告の方法を知り、正しく納税しましょう。

いろんな届出の必要はあるのか?

フランチャイズでやるか個人でやるか?

塾の開業の方法として大きく二つに分かれます。それは、


A.すべて個人で準備して開業する。


B.規模の大きい塾チェーンのフランチャイジーになる。


の2つです。それぞれのメリットとデメリットがあります。


-------


A.の個人で塾を開業する場合のメリットは、大きく2つ考えられます。


・教える内容や時間を自由に設定できる。


・授業料を自分で設定できて、それはすべて自分の収入となる。


一方、デメリットは,


・すべて自分で一から教材や授業内容、カリキュラムなどを作らなければならない。


・集客が難しい。


-------


B.塾のフランチャイジーになる場合のメリットは次の通りです


・フランチャイザーの作成した教材やカリキュラムで授業ができる。


・本部費用である程度の宣伝や集客をしてくれる。


一方のデメリットは、


・フランチャイズ料(ロイヤリティー)を毎月支払わなければならない。


・自分の自由が利かず、権利関係にある程度縛られる。


以上のようなことです。このことについては次回の記事で詳しくご紹介しましょう。

フランチャイズでやるか個人でやるか?

儲けはいくらくらいになる?

生徒さんからいただく授業料や月謝から、使った経費を差し引いたものが「儲け」ということになります。これは運営形態によって大きく変わってきます。


一番大きく影響するのが、「教室」そのものの存在です。「教室」を自分の所有物として持っている自宅開業などの場合は、かかる経費は文房具代やコピー代くらいのものでさほど大きくありませんので、もらった授業料のほとんどを儲けにすることができます。その代わり、自宅などでは集客できる生徒数にも限界があるので、儲けはやがて頭打ちになります。


一方、もっと生徒さんを獲得しようとして集客しやすい駅前などに教室を借りた場合、生徒が一定以上集まればそこから先は生徒が増えれば増えるほど儲かります。


その代わり、その場所に応じた価値の毎月固定額の賃借料を払わねばなりません。それに加えて賃借物件の場合、内装工事などを施さないと使えない場合が多く、高額な初期投資も必要になってきます。


後者の場合でも、このケースでよくあるのがフランチャイズでの学習塾の開業ですが、人口減少時代の今日、集客の見込みがあるかどうかについて十分な検討が必要です。

儲けはいくらくらいになる?

税金はどれくらいになる?

個人事業主として塾を開業すると、生徒さんからいただく授業料は確定申告上の「総収入金額」の一部としてみなされることとなります。


総収入金額から必要経費を引いたものが事業所得金額ということになります。以下の式で納めるべき所得税を計算できます。


事業所得授業料等の年間合計-必要経費


所得税額=事業所得×事業所得に応じた税率-事業所得に応じた控除額


ということになります。


事業所得に応じて税率と控除額が決まっています。


最低で事業所得が195万以下なら5%・控除額0円、最高が事業所得4,000万円以上で40%、控除額は4,796,000円と「儲け」が多ければ多いほどたくさん納めることとなります。


詳しくは、国税庁のページ等でわかりやすい情報がありますので簡単に調べることができます。


自分の開業する塾はいくらくらい稼げるかいくらくらい費用が掛かるのかを見積もって税金をいくら払わなければならないかについても計算してみる必要はありますね。


もう一つ、個人で事業をしていることによってかかる特有の税金として、市町村が徴収者となる「個人事業税」があります。


個人事業税は先ほどの所得額から一律290万円を引いた額に塾の経営なら5%をかけた額になります。(したがって、「儲け」が290万円以下なら課税されないということになります。)お住いの市町村から年2回納付書が届きます。

税金はどれくらいになる?

開業資金はいくらくらいかかるのか?

塾の開業資金っていくらかかるのでしょうか。


いろいろな種類の起業があるなかでも実は塾の開業はあまり資金がかかりません。


例えば一番よくある例が、自宅のリビングで始める個人塾ですが、この場合ですと極端な話、0円でも始められます。ホワイトボードを買ったり、部屋に掲示物や飾りつけをしたりする必要が出てくることと、掃除と部屋をきれいにするために費用くらいでしょうか。


あとフランチャイザーとして始める場合では、専用のグループウェアなどを使用した管理が必要になったり、教材の配布がWEBページであったりしますのでパソコンは必須となる場合が多いです。パソコンをお持ちでない場合は購入しておく必要はあるでしょう。


フランチャイザーによりますが、開業準備金として数万円を支給してくれるところもありますのでよく調べてみましょう。


塾の開業でお金がかかるケースは、集客できそうな場所に教室を借りて看板を出す場合のケースです。


駅の近くなどの物件で、本格的に行うのであれば、内装を改装する必要も出てきて、百数十万から数百万単位で必要になってくる場合もあります。賃貸料や管理費のランニングコストもかかってきます。


これらは、最初どれくらいの規模で始めるかということによりますので、集客可能な規模を見定めたうえで十分に検討が必要です。

開業資金はいくらくらいかかるのか?

開業資金の融資を受ける方法はあるの?

個人で開業し、開業資金・初期投資が必要な場合で、まず相談に行ってほしいのが「日本政策金融公庫」です。


日本政策金融公庫は政府系金融機関です。「国民生活事業」という部署で、「新規開業資金(新企業育成貸付)」等の融資を受けることができるようになっています。


塾開業の場合,1,000万円を超えるような初期投資は必要ないと思いますので,教室の改装費用などの融資を受けることはほぼ可能でしょう。(※1,000万以上の融資は,「雇用創出」など各種の条件を満たすことが必要になってきます。)


設備に使うお金であれば返済期間も20年以内となっています。

開業資金の融資を受ける方法はあるの?

まとめ

塾の開業は、開業しようとする種類や規模でその必要な届け出や資金も変わってきます。また運営方法(次回で解説します)でも変わってくると思います。


自分のやりたい塾があれば、まずどのような規模で始めるかよく考えてから始めましょう。「小さく生んで、大きく育てる」という言葉もありますよ。

written by 鬼尾 宗慶

人事、労務、税務などビジネス関係に関する依頼の多いフリーライター。看護師の転職など、働く女性についての執筆も多い。
趣味:航空写真・バイク