はじめての確定申告
はじめての確定申告

はじめての確定申告

なんとか起業し本当は一息つきたいけれど、「確定申告をしなければいけない」「どのようなことをすればいいの」「なんだか難しそう」と思っているのはあなただけではありません。そこで今回は、初めての確定申告には何が必要か、どのような手順で進めれば良いのかについて解説します。

法人の場合

法人格、つまり株式会社の形で企業をした場合には申告期限はその会社の決算月から2ヶ月以内と決まっています。例えば3月を決算月として起業した場合、4月から3月までの所得を計算し、その2ヶ月以内なので5月31日までに申告と納税を済ませます。法人の場合、申告する税目は法人税です。提出先は本社がある場所となります。

個人の場合

個人事業主として開業した場合は、法人と違って任意で決算月を決定することができません。1月から12月までの1年間の所得を計算し、年明けの2月14日から3月15日までに申告と納税を済ませます。申告する税目は所得税です。会社員で雇われていたときは、給与よりも厳選所得税が徴収されていましたが、個人で開業すると給与がないため1年間の税金はこの時に納税します。納納税ができない場合は一括納付ではなく分納も可能ですので、その際には税務署へ相談します。ただし、本来なら1度に納付を完了させるものなので分納で遅れて納付する場合はその分利息がかかります。提出先は、自分の住所地を管轄している税務署です。ただし、自宅住所を納税地としない時例もあります。もし住所地を納税地としたくない場合は、開業届を提出する際に納税地を記載しておく必要があります。

確定申告に必要なもの

確定申告に必要なもの

ここでは個人の確定申告に的を絞って解説します。まず申告するために必要な書類を揃えます。税務署へ提出するものは決算書と確定申告書の2種類です。事業を行っている場合の事業所得の計算のために必要なもの、自分の所得税の申告のために必要なものがあります。そこで事業所得の計算のために必要なものと、それ以外で必要なものは以下の通りです。

事業所得の申告に必要なもの

1.売上台帳
2.経費をまとめたもの

それ以外に必要なもの

3.所得税控除を受けるために必要な書類
4.そのほか譲渡等があればそれに関する書類

申告の為の手順

実際の申告のための手順

売上が軌道に乗るまでは、売上がほとんどないこともあり申告直前でまとめても大丈夫と思いがちです。しかし実際は違います。例えば開業届を提出したときに、青色申告の届出も行っていれば、複式簿記による帳簿を作成し保存することが求められます。(青色申告特別控除を利用する場合)
青色申告特別控除を受ける場合は、帳簿要件を満たすために会計ソフトを活用することがほとんどですが、それ以外の場合はエクセルなどで簡単に売上と経費をまとめておくと申告の際にかなり役立ちます。
事業所得とは簡単に言うと「売上−経費」で求めることができた数字です。200万円の売上に対し100万円の経費を使ったとすればそれを差し引いた残りの100万円が事業所得となります。この残った100万円に税率をかけて出てきた数字が税額です。

控除書類

事業所得だけで税額が決まるわけではない

所得税の申告には「所得控除」と「税額控除」と言われる2種類の控除があります。確定申告で申告をするときには、この両方の中で適用できるものがないか検討します。 所得控除と税額控除の種類は以下の通りです。

所得控除にあたるもの(勤労学生控除と配偶者特別控除は割愛)

医療費控除
社会保険料控除
小規模企業共済掛金控除
生命保険料控除
地震保険料控除
寄付金控除
障害者控除
寡婦(寡夫)控除
扶養控除
配偶者控除
基礎控除
雑損控除

税額控除にあたるもの

配当控除
外国税額控除
(特定増改築等)住宅借入金特別控除
中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除 など
所得控除の種類は様々で、ここに紹介しているものの他にもあります。しかし実際によく適用されており誰でも該当する可能性があるものはこれらが代表的です。ではこれらを活用する場合、どのようにして申告すれば良いのでしょうか。

書類

所得控除や税額控除を受けるために必要な要件と書類

所得控除や税額控除は要件を満たせば誰でも適用できますが、申告のときにそれを証明するものとして書類の添付が求められる場合があります。求められる場合はそれぞれ確定申告前に「控除証明書」という形で発行されます。ここでは誰でも該当しそうな控除に必要な書類をご紹介します。

基礎控除を受ける場合

「受ける場合」と表現していますが、実際は申告をするときに誰でも受けられる控除です。38万円あります。こちらの適用はもれなくついてくるものなので、特に証明書などw準備する必要はありません。

社会保険料控除を受ける場合

社会保険料に含まれるのは年金と健康保険料の支払いです。年金は控除証明書が送られてきます。健康保険料は実際に納付した領収書もしくは役所より郵送されてくる決定通知書により計算します。

小規模企業共済掛金控除を受ける場合

小規模企業共済とは、個人事業主や共同経営者が自分に退職金を積み立てていく制度です。普通退職もありますが病気などにより退職、若しくは廃業せざるを得なかった場合に積み立てたお金を受け取ります。掛金を支払っている間はその年間に支払った合計額全てを控除額として所得額より差し引きできます。同様に、将来の年金の積み立てで行っている確定拠出年金(イデコ)も年間の掛金全額を所得より差し引くことができます。また、小規模企業共済課金控除は、住民税の節税にも大きな効果があります。加入していない人は、これを機会に検討してみることをお勧めします。

生命保険料控除、地震保険料控除を受ける場合

生命保険料と地震保険に加入している場合、保険会社より控除証明書のハガキが届きます。最近は電子データで届くケースもあるようですが、圧倒的に書面での郵送になります。生命保険料は小規模企業共済掛金のように支払った全額が控除できるわけではありません。加入している保険の種類により一定の算式に当てはめて計算します。
地震保険料控除は受けられる上限額に制限はありますが、多くの人が支払った全額を控除できるのが一般的です。

医療費控除を受ける場合

医療費控除は誰でも該当する可能性が高い控除の1つです。病院の領収書や薬局で薬を購入した際の領収書の金額で判断します。原則は合計額が10万円を超えた場合、その10万円を差し引いた残額を所得より差し引きます。例えば病院代と薬代で総額12万円支払ったとすると12万円−10万円で2万円を所得から差し引きます。これが原則ですが、セルフメディケーション税制という特例もあります。これは薬局で購入できる病院で処方されるものと同じ薬を購入した場合に適用できます。この場合、該当する薬を12,000円以上購入していると、適用の可能性があります。対象の薬を15,000円分購入していたとするとそこから12,000円を差し引いた残りの額の3,000円を所得の額から差し引けます。しかし上限が88,000円と決まっているため、原則と特例、どちらが有利になるか判定する必要があります。

寄附金控除

俗に言う「ふるさと納税」が該当します。ふるさと納税は確定申告をする際には適用されないので、寄付をした市区町村から発行される控除証明書が必要です。ワンストップ特例というものがありますが、確定申告をする場合は自分で計算しなくてはなりませんので注意が必要です。

(特定増改築等)住宅借入金特別控除

一般的によくいわれているローン控除のことです。適用1年目は会社員で年末調整をする人でも確定申告をしなければ適用が受けられません。12月末時点のローン残高の1%が控除できる金額になります。ただし、消費税8%で家を購入しローンを組んだ場合と10%に増税されてから購入しローンを組んだ場合とでは適用年数と控除額の計算方法に違いがありますので、年末近くにローンを組んで家を買ったという場合は、例年の取り扱いと違うということを確認しておきます。

注意

注意が必要な保険料の支払と受け取り

事業を行っている人の場合、保険料の支払には注意が必要です。それは事業用と個人を明確にしなければならないということです。事業用は事業所得を申告する際の経費でありそれを受け取った場合も事業での収入となります。個人で支払った部分は個人の所得控除で利用するため、事業所得の計算に含める事はできません。ひとつの建物の中に個人部分と事業部分があるときは、使用している面積をもとにそれぞれ按分するなど根拠のある方法で分ける必要があります。

受け取っている補助金がある場合

補助金を受け取っている場合、通常は事業の中で受け取っていることが多いので事業所得として計算します。所得の中に含まれるので注意が必要です。ただしその補助金で資産を購入した場合は、その購入した金額より補助金部分を差し引きます。補助金を受け取って赤字を補填するというのも、損益計算書をよく見せるための1つの方法ではありますが、所得税の課税対象であるということは忘れてはいけません。

個人事業主の中でもよく利用している特別控除の解説

一見すると法人の方が税額控除に該当しやすいと思いがちですが、実際には違います。法人と個人で同じ税額控除が適用できる場合もあり、個人事業主の場合は知っておかなければ損をすることがあります。所得税の規定にないものは、法人税の規定に準ずるといった傾向もあり、その点は情報収取がカギを握ります。そこで該当しやすい2点の特別控除について簡単に説明します。

中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除

これは、新しく機械を購入した際に適用できる税額控除です。機械と言っても製造用の大きな機械だけではありません。工業会が証明書を発行できるものについては対象となり、さらに取得した金額が適用できるかできないかの要件になります。

雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除

この特別控除を受けるには以下の要件を満たす必要があります。
1 雇用者給与等支給額が前事業年度を上回っていること
2 継続雇用者給与等支給額が前事業年度と比べて1.5%以上増加していること
ここでいう継続雇用者の定義は中小企業庁のHPで確認することができます。例えば①の判定には、単純に損益計算書ベースで12月を終了した時点で比較をします。ただし、全事業年度がない設立1期目は適用可能ですが通常の扱いとは異なるので、都度確認が必要です。

令和元年分の確定申告で注意すべきポイント

令和元年分の確定申告で注意すべきポイントがります。それは「雑損控除」です。災害、盗難、横領によって損害を受けた場合に「損失が出ました。控除してくれませんか。」という制度です。どれも自分だけでは抑制できないものであるのが判定の基準です。そのため、近年増加している自然災害はこの「雑損控除」の対象となります。もちろん、損害保険金で賄えた部分については差し引きを行いますから、損失すべてが対象というわけではありません。適用を受ける際に、災害の場合は罹災証明書の確認を求められる場合がありますので、被害にあっているときは、事前に取得しておくことをお勧めします。

はじめての確定申告を乗り切るために

自ら事業を起こし経営をしていくことは、たとえその経営形態が法人でも個人でも大変な労力を使います。しかし将来的に規模を大きくするために借入をしようと思っているのであれば、正確な確定申告書は借入審査の際の重要書類ともなります。もちろん適正な税金を納めるための申告ですが、それだけではないということも知っておくと役に立ちます。
起業した場合、一息つかないうちにやってくるのが確定申告かもしれません。業種によれば繁忙期ということもあるでしょう。しかし、事業を行っているすべての人に申告義務はあります。わからない場合は専門家や税務署でも相談に応じてもらえますのでそういった機関をうまく活用することも確定申告を乗り切るポイントです。